西アジアを中心として呟くこと

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結局クルドなトルコリラ安の話

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ひょっとしたらもっと日本にも影響するかもしれないトルコリラ安の話

ホント筆が乗ると毎日更新しますね、このアカウント。

 

さて、今回はトルコ滞在シリーズから一転して、ちょっとまだホットなうちに、トルコリラ安についてまとめたいと思います。

なんでかというと、トルコ滞在シリーズでも言及しますが、なんとトルコリラ最安値の時に私はトルコに滞在していたからです。

 

写真自体は自粛しましたが、イスタンブールのグランドバザールやボスフォラス海峡のアジア側などのレートの電光掲示板の前には常に人だかりがある。そんな感じでした。

客引きにもトルコリラ安使われるし、どんだけ敏感かよ。

そう呑気なことを考えていた私もいました。

 

帰国(8月14日)後に調べたら、これ案外デカい問題でした。そしてこれは将来的に日本外交とかにも影響しかねないんじゃないかな~~て感じでした。

外交とかド素人ですが、私なりに色々調べたのを纏めてみました。

 

お断り

基本的にソースは誰でもアクセスできるものを選んでいますが、定期購読しているウォールストリートジャーナル(以下WSJ)のみ有料コンテンツなのはご容赦ください。

 

今回の騒動の概要#とは

一言でいえば、トルコリラのレートが暴落したという話です。

昨年11月とか12月頃は1トルコリラ=30円程度でしたが、私が渡航した7月下旬は1トルコリラ20円ほどでした。

安い!!

 

楽天証券によれば、こんな移動(2018/09/22/9:44時点)をしています。

まじか

単純移動平均(5日) 単純移動平均(25日) 単純移動平均(75日)

www.rakuten-sec.co.jp

 

このグラフは3ヶ月のものですが、8月からめちゃんこ落ち込んでいるじゃないですか。

これを1年単位でみると、こうじゃ!!

単純移動平均(5日) 単純移動平均(25日) 単純移動平均(75日)

データは同じく楽天証券(2018/09/22/09:47ごろ)からです。

 

で、この結果、消費者的にはマジラッキーっていう状態でしたが、投資をしていた人たちには大損だったりしたわけです。

 

因みに、筆者は最安値を記録した時期にイスタンブールのグランドバザールに居たので、めちゃくちゃ得をしたタイプの人間です。

 

そもそも始まりは2008年から

とはいえ、この危機も急に始まったわけではないそうです。

ということで、同じく楽天証券のデータを10年毎に観てみましょう。(2018/09/22 09:52参照)

単純移動平均(9月) 単純移動平均(24月) 単純移動平均(60月)

お判りいただけたでしょうか。

2008年頃にもめっちゃ急落しているんです。

 

さて、9月10日のWSJの記事にも2008年は触れられています。

jp.wsj.com

 

そう、2008年と言えばリーマン破綻からの金融危機

10年の節目だからか、この記事のような若者世代の話以外にも、またそんな危機が来てもおかしくないねー、みたいなそんな記事が最近ちらほら。

これなんかもそんな記事ですね。

jp.wsj.com

 

当時私は小学5年生。大した記憶はありませんので、ここでは割愛します。

重要なのはここでトルコリラの暴落が始まったということです。

 

天下のGoogle先生によれば、当時の1トルコリラは100~90円程度で取引をされていた模様。

これが2009年には1トルコリラ=60円程度で取引されるようになります。

どーん

 

そしてここで終わらないのが、今回の暴落の1因になります。

 

やはりここは日本国民たるもの外務省のデータを参考にしたいところ(まーたいい加減なこといいやがって)

ということでぺたり。

レジェップ・タイップ・エルドアン大統領略歴 | 外務省

2007年から第2次エルドアン内閣発足です。

 

デデーン。

 

 このエルドアンが今回の要素1です。

2003年に第1次内閣を樹立し、政権を握ってから10年間、彼はトルコの民主化改革と経済改革を推し進めてきました。

トルコは民主化と独裁の分岐点に立っている | グローバルアイ | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

(2018/09/22閲覧)

 

よく忘れられますが、一応トルコはNATO加盟国です

西アジアの情勢安定化のためには、トルコの存在がキーだ、なんて言われていた時期もありました。

特にトルコはイスラーム国家の中でも世俗的な国家と言われてきました。

詳しくは高校世界史の教科書を見てほしいのですが、やっぱりそこには建国の父・ケマル・アタテュルクの影があるんじゃないでしょうか。

2015年のメディアには、未だアタテュルクの影がトルコ内では大きく、さらに民主主義の最後の砦はアタテュルクの出身でもある軍部、みたいな書き方をされていました。

 

事実、外務省のホームページにも何回も軍部によるクーデターが行われていることを確認できます。

トルコ共和国 | 外務省

(最終閲覧:2018/09/22)

 

が、2013年頃からエルドアンは独裁方向に踏み切り始めた、そんなことも言われてきています。

そんなエルドアンには唐人外国からは不安が寄せられるわけで。

 

しかもとうとう最近、「民主的な国家」から「民主的でない国家」へと下落しちゃいましたよ、トルコ共和国

 

ここの不信感もあり、レートが下落を開始します。

更にさらに。

 

私は経済学を専攻していないので、詳細には説明しかねますが、レートの回復には金利を上げることが有効だと言われています。

 

そもそもトルコリラ安で投資家集団がダメージを受けたのは、トルコリラが投資家に人気だからだそうです。

人気な理由はやはりトルコリラ金利が高いから。

位置的にも今後の経済成長が見込める、とかその他諸々の要因はやる法ですが、他の要因は今回の話に直結しないので割愛します。

 

なので、トルコの中央銀行としては、金利をあげたい。挙げてレートを回復させたい。

 

ところがどっこい。エルドアンが邪魔をします。

 

エルドアンの最近の経済政策には「ブードゥー経済」なんてな批判もつけられています。

jp.wsj.com

 

これにより、ますます不信感が投資家の中で漂ったのだとか。

更には身内を財務大臣に就任させたり、先日選挙で再選したさいにも、「独裁者」なんて言われるくらい、強める独裁体制

 

他にも近年のISなどの問題で、治安にも不安を寄せられています。政治・経済も不安定そうなのに、治安もやばいのか…みたいなそんなあれ。

更には増していく中国経済への懸念と不透明な政治。

2018年には米核合意離脱もあり、一気に西アジアの情勢が不安定化します。治安がますます不安になるんじゃ~~~

 

結果として、ここ数年言われていた、イスラーム圏での優等生・トルコ像が段々と揺らいできています。これがトルコリラ安の理由1:政府への不信感でした。

 

トルコとクルドの根は深い

私的に、これが一番影響していると思われるのが、クルド人問題です。

 

さて、今回のトルコリラ安のトリガーを引いたのが、対米関係であるとも言われています。

上述した不信感自体は2013年頃からあったようですが、対米関係が悪化したのは2017年10、11月頃。

なんですが、8月頃にズドーンッ!と下がったのにはもう1つの大きな要因があります。

それがブランソン牧師という方をめぐる問題です。

 

2018年7月26日、アメリカ・トランプ大統領が彼の釈放を要求して経済制裁をちらつかせたことが事の始まりです。

jp.wsj.com

 

さて、このブランソン牧師という方はどんな方なのか。

 

彼はアメリカ人の福音派牧師です。

トルコ・イズミルで布教活動をされていたのですが、クーデターほう助の疑いで逮捕されています。

あ、イズミルには、アタテュルク大学という大学があるそうですヨ。ソース:私の友人inトルコ

 

さて、福音派と言えばアメリカ政治を連想される方もいるでしょう。

そう、トランプ大統領

同時期、選挙に関してロシアが関与していたのではないか?という疑いが中間選挙を前にして再びかけられているこの米大統領、支持基盤に白人福音派が挙げられます。

トランプ政権と白人福音派 | 2020年アメリカ大統領選挙と日米経済関係 | 東京財団政策研究所

 

この福音派にとって、ブランソン牧師釈放は重要です。異郷の地で10年以上布教活動してるからでしょうか。

そして、トランプ大統領にとって、中間選挙で勝つには福音派の支持が欠かせません。

実際、着任後も福音派受けするような動向を取っていたようですし。

 

なので、圧力をかけました。(言い方選べよ)

2016年に逮捕したブランソン牧師を開放しろと。

(丁度自宅軟禁に移された翌日のことです。)

具体的にはギュル法相とソイル内相に経済制裁を加えたそうです。

 

が、エルドアン大統領は当然講義をします。

 

「お前、NATO加盟国を脅して許されんのか!!」的な発言をします。

そういやトルコってNATO加盟国でしたね。加盟国感まったくないけれど。

 

なにが言いたいかというと、めちゃくちゃ対米関係冷え込みます

 

 そしてそれを受けて馬鹿みたいにレートが下がった8月13日、という構図が成り立ちます。

最近ではカタールやドイツが支援をして、何とか20円前後で落ち着きを見せ始めていますが、30~40円台に戻るにはまだまだかかるでしょう。

 

でもなぜブランソン牧師は捕まっているのか

結局そこが気になる所なんですよね~~~~。

 

さて、ブランソン牧師が捕まった2016年といえば、トルコであんまり嬉しくない事件が起きています。

7月15日、クーデター勃発です。マジか。

詳しいことは先ほど上に貼った外務省HP、トルコ共和国の基礎データの5章内政のところで確認できるので、本記事では割愛します。

まあこのクーデター、失敗しているんですけどね。クーデター未遂事件として記録されます。

でも、ここでブランソン牧師はクーデター幇助容疑をここで掛けられ、逮捕されます。

 

この失敗したクーデター、誰によるものなのかというと、ギュレン運動という派閥によるものです。

当初はエルドアンの支持母体であったもの、2013年以降関係は冷え込み、とうとう完全決裂を起こした派閥です。

そしてこの事件を契機にエルドアンは独裁の方向性を強めたとも言われています。

 

で、その幇助でブランソン牧師は捕まっています。

 

が、これはあくまで直近の話。

 

どうやらブランソン牧師は別案件でも幇助をしたと(トルコ政府に)言われています。

 

それはPKKの支援

 

PKKとはクルド労働者党のことであり、クルド人なしにはトルコの社会課題は語れないんじゃないかというぐらい大きな存在がクルド人です。

クルド人といえば、かつてアイユーブ朝創始者サラディンを輩出した民族でもありますが(詳しくは高校の世界史参照)、現在は国家を持たない最大の少数民族としても知られています。

 

そしてクルド人とトルコ政府は仲が悪い。

近年歩み寄りを見せたかと思いきや、衝突を起こしまくったりしてます。

 

…よく事件に遭遇しなかったな、トルコに居た時の私。

 

それはさておき、クルド人を巡っても米土関係はちょっと荒れています

なんと、オバマ大統領の時点で既にごたごたしてきています。

トランプ大統領だけじゃないんです、原因は。

 

オバマ大統領といえば、初の黒人系大統領、ノーベル平和賞受賞から始める任期という事実ににプラスして、”ビンラディン殺害声明”を出したことでも知られていますね。

というかちょっと前まで大統領でしたし。

 

で、ISが一番ヒートしていた時期はこの人の任期でした。

てか、バクダーディー殺害声明もこの人でしたよね。確か。

平和#とは…。

 

ISには色んな呼び名がありましたが、IS以外で一番有名な名称はISISかと。

Islamic State of Iraq and Syria

ISILとか他にもありますが、結局一番言われていたのはISISだと勝手に思っています。当時ちゃんとカウントしておけばよかったかな。

 

で、思い出されたか方もいるかもしれませんが、クルド人って別にトルコだけにいるわけじゃないんです。

イラク、イラン、シリアの国境地帯にまたがっています。

 

で、彼等はISに対抗する要因として、アメリカに目を付けられ、支援を受けたと言われています。

一応、その団体の名前自体はPKKではありませんでしたが、トルコ政府の観点では、「アメリカは反トルコ政府集団に軍事支援をするのか」、つまり同じ団体であるのです。

当然、当時からトルコ政府から抗議の声が上がります。

そりゃそうだ。

 

で、更に今回のブランソン牧師が援助したと言われている団体を加味してみてください。

 

お判りいただけたでしょうか。

実際の真偽は別として、いかに容疑がトルコ政府の地雷を踏み抜きまくっていたかということについて。

 

前述した「NATO加盟国を人質にとっているぞ!お前!」的な発言にもつい納得してしまいます。

問題はどこまで容疑が真実か、って話なんですけれど()

 

因みにクルド人に関する問題は根が深く、トルコがアメリカ軍にも貸し出しているインジルリク空軍基地問題にも波及しています。

 

結局クルド人じゃねえか

筆者がそう思ったのも無理がないでしょう。

 

以上、理由2:クルド人、でした。

 

まとめ

8月11日のWSJによれば、米土関係の火種は6つあります。

ブランソン牧師、シリア、インジルリク空軍基地、フェトフッラー・ギュレン、ハルク銀行、エルドアン大統領の警護隊

jp.wsj.com

 

でもこの記事が示す通り、結局半分はクルド人問題が起因しているんですよね―――――。白目。

確かに残り半分はエルドアン大統領への不信感にカテゴリされるでしょう。

しかし、急にトルコリラがドゴンッって落ちてるのが、制裁がちらつき始めた7月末から数日空いた8月からですから、トリガーを引いたのはやっぱりクルド人問題絡みが割合としては多いんじゃないでしょうか。

そりゃ(確か)中学社会でもクルド人問題を扱いますわ。

本当に根が深い。

 

最後の最後にまじめな話をすると、日本にとってもこれは重要だと思ってます。投資家以外にとっても。

というのもトルコは八方美人な外交をすることに定評があり、既にロシアや中国に接近を始めているんだとか。

詳しくはこちらの記事もご覧ください

geschichte40.hatenadiary.jp

 

今トルコが反米国家に完全になってしまったら…。

アメリカにとってはいいことが無く、アメリカに国防を頼っている日本にとっても利は殆どないんじゃないでしょうか。

中国がアメリカとの貿易戦争どうにかしない限り、トルコにそこまで答えるとは思えませんが…。

 

半年後にはトルコリラはどうなっているんでしょうか??

エルドアン大統領のツイートで衝撃的な噂もたったことですし、ホント今後どうなるんでしょうね。白目

<blockquote class="twitter-tweet" data-lang="ja"><p lang="tr" dir="ltr">Rahib olduğunu iddia ettikleri Brunson Askerdir.<br>Amerikanın Irak&#39;ı işgalinde Irak altınlarını yağmalama operasyonlarının komutanı idi.<br>Bu görüntüler de bu yağmalamanın fotoğrafları. Amerika için bu rahibin ne kadar önemli olması, ya konuşursa...<br>ABD Irak’tan çaldıklarını Ver. <a href="https://t.co/XH0keCm2UJ">pic.twitter.com/XH0keCm2UJ</a></p>&mdash; Mehmet ERDOĞAN (@mehmeterdogan27) <a href="https://twitter.com/mehmeterdogan27/status/1031436840958611456?ref_src=twsrc%5Etfw">2018年8月20日</a></blockquote>
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これがフェイク何だか、そうじゃないんだか。。。真実はどこだ(真実は1つなんでしょ、ねえ名探偵コ〇ン)

 

一介の消費者である大学3年生の切実な願いとしては、卒業旅行の時までもう少しトルコリラ安が続いてほしいものですが(おい)